国際連合環境計画(United Nations Environment Programme,UNEP)が

報告書「RECYCLING-FROM E-WASTE TO RESOURCES」
(和訳:再生利用―電子ごみから資源へ)

を先月下旬にまとめ、発表しました。

UNEPとは、ナイロビに本部を置く国際連合の補助機関であり、
環境分野を対象に国連活動・国際協力活動を行っています。
昨年大きな話題となった

  • 気候変動に関する政府間パネル
  • オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書、
  • 生物の多様性に関する条約、
  • バーゼル条約

などもUNEPにより管理されています。

閑話休題、本題です。

この報告書では、

今後10年間で発展途上国における電子機器類の売上が急増すると同時に
電子ゴミ発生量も急増し、もしこれらの回収やリサイクルを行わなければ、
電子ゴミに含まれる有害物質によって、環境や人間の健康に深刻な悪影響が及ぶことになる

と記しています。 そして結論として、

各国に対しリサイクルの技術や仕組みを確立して
ハイレベルな電子ゴミの処理場を設立するよう勧告

しています。

報告書内容概略は下記のURLリンク先よりご覧ください。

なぜ私がこの話題を取り上げたかと言えば、
この話題にこそ将来の日本にとっての成長戦略、
「日本版グリーンニューディール政策」の進むべき道の一つ
示されているからです。

このブログを何度かお読み頂いている方はご存じの通り、
日本では経済産業省が中心となって都市鉱山戦略を進めています。
この戦略の第一義はレアメタル確保にありますが、実は

日本にとっての成長戦略、雇用確保手段、
国際的な政治発言権の確保戦略にも繋がっています。

どういうことか?

キーポイントは

「世界的に見て高効率・低コスト、且つ安全にリサイクル精練を行える技術と設備は、日本とベルギー(強いて言えばカナダとメキシコも加えることも可能ではあります)にしか存在しない」という事実にあります。

現在欧米を始めとした世界中の使用済み電子ゴミ
(家電ゴミと言い換えた方がわかりやすいでしょうか?)
の大半は、実は何らかの経路を辿って最終的に中国へたどり着き、
この地でリユース、リサイクルがなされています。
劣悪な環境と設備の元で中国の土壌や大気を汚染し、重大な環境問題を引き起こしつつ。

ところがこの流れに変化が生まれています。

中国での政策転換と人件費の高騰、リサイクル業者の減少等の諸要因により、
これまで中国へ輸出されていた使用済み電子機器類が
従来の輸出国で留め置かれ、溜まりつつあります。

同時に電子ゴミの発生が急増している発展途上国では、
これらのゴミから貴金属である金・銀・白金・パラジウムや
非鉄金属である銅・亜鉛・鉛を
いい加減な方法と設備で精錬する業者が後を絶たず、環境汚染を引き起こしています。

この状況を変えるには、何が必要か?

日本とベルギーのみが持つ優れた製錬技術と設備が不可欠となる

というわけです。
ここで考えられる方法は基本的に2つ、

  1. 技術と設備を各国へ輸出する
  2. 電子ゴミ処理を各国から受託すると同時に
    貴金属やレアメタルの回収を行う

です。
但し実は①の方法はあまり現実的ではありません。

何故ならば施設建造にかかるイニシャルコストが莫大であり、
日本やベルギーのように旧来より鉱山で使っていた精練設備を流用するなどしないと、コスト的にペイするのが困難なためです。

よって必然的に②の方法が採用されることになります。

②の方法をとった場合、

日本(とベルギー)は世界中から電子ゴミの処理を受託することになり、
これは巨大なリサイクル産業の育成に直結します。

世界でも2カ国にしか維持、育成し難い産業、
将来の日本にとってこのような差別化された産業が極めて貴重であることに
疑いの余地はありません。
雇用創出効果も十分に期待できますし、環境立国として国際的に重要な地位を占める可能性も必然的に高くなるでしょう。

日本の成長と、世界の環境保護を両立させるすべとして、また人類の存続のためにも、日本政府にはこの都市鉱山分野の成長促進につながるような法整備を、力強くかつ急速に進めて頂きたいものです。


齋藤崇人のコラム
次回は 4月2日(金)に掲載します。